2001.8.4

久しぶりに日米市場心理が強気に傾いている。米大手証券会社のアナリストによる世界の半導体関連株19銘柄の格上げが、ハイテク関連銘柄に幅広く買いを集めるきっかけになり、日本の市場にも波及してきた。しかし米情報通信・エレクトロニクス関連セクタ−の深い落込みは、いま、反転の兆しを孕んでいるのだろうか。マクロ統計を観察すると、6月の受注統計が半導体出荷の前月比+0.4%を示しているが、前年比では−21.5%であり底入れ反転の兆しを示すシグナルであると断言するのは難しい。そうであれば半導体市況にまず値動きが起こりそうである。「中長期的には、ハイテク・セクタ−は底に近づいている」という見方がある。それは単に、「今まで随分下落した」ことを説明する言い方に過ぎないことに注意しなければならない。

米ハイテク・セクタ−の落込みの深さと時間の長さは、FRBを困惑させている。私は、FRBが優れた政策機関であるため、ハイテク・セクタ−の経営者達にモラル・ハザ−ドを起こした可能性があるのではないか、と考えている。FRBが年初から素早く利下げに動き、しかも畳み込むように利下げを重ねたことは、「落込みは短期的かもしれない」という希望的観測をもたらした可能性が高い。経営者にそういう希望的観測がある間は、経営判断も甘目にならざるを得ない。しかもFRBを率いるグリ−ンスパン議長の神話が生きていた。FRBが俊敏に、優れた対応をすればするほど、経営転換は遅れたに違いない。FRBの悩みは、彼らが優秀であるために、むしろ深まったと考えられる。米株価は、まだ踊り場にある。

参議院選挙は小泉効果を確認する結果に終わった。小泉内閣の改革政策を実行に移すための、必要条件の1つがクリア−されたことになる。選挙後のマスコミ報道に増えてきた改革抵抗現象は、いよいよ小泉内閣の改革が動き始めたことを意味している。動かなければ摩擦は生れないからだ。銀行の動きもそれなりに始まってきた。小泉内閣の改革政策は、世界の注目を集めているが、その動きが姿を現わしてくるのは臨時国会が召集され国会審議が始まってからのことだろう。それまで、外国人投資家の多くは夏休みを楽しんでいるであろうため、積極的な様子見であろう。国内の売り手は、売り続けることに慎重な姿勢を見せるだろう。市場需給は改善傾向にあるため、日経平均株価の参考レンジを12000−13000円に引き上げる。

野村證券 投資情報部 東田雅昭

2000.6.10

ここもと軟調な東京証券取引所、6月7日に上げるものの、8日・9日と続落。値嵩ハイテク株の暴落・インデックス入れ替え・ニューヨークのブラックマンデー説・外国人投資家の売り越しなど原因はいろいろと考えられる。また、今は株式市場自体が大きな転換期、マザーズやジャスダックに資金が流れたり、東証の株式会社化・世界市場創設など先行き不透明な面もあり、くわえておそらく年内に実施されるであろうゼロ金利政策解除、4月の暴落は、速水総裁がそのことに言及したためにまずニューヨークが下落、その過敏反応で東京も暴落といった流れであろう。また故小渕首相の件も海外から見れば、かなりマイナス要因だったようだ。

日本経済回復の足取りは着実だとはいえ、日本市場が外国の、特にニューヨークの影響をあまり受けずに、自立性を取り戻すまでには、まだまだ時間がかかると思われる。とりわけ、将来必ずあるであろう「日本ゼロ金利政策解除」のニュースのインパクトは絶大で、この政策が世界経済を支えてきたといってもいいという日本のアナリストも多く=(こういったことは外国の経済評論家はそう思っていても言わない、あるいは言えない)株価への必要以上の悪影響は避けられない。とにかく自国の経済状態だけに気を取られてはいけない。日本市場にもっと影響のある人物はグリーンスパン議長であるし、アメリカ経済に影響力のある人物は速水総裁・宮沢蔵相であることを忘れてはいけない。

こういったことから、投資家の手控えムードは、本年末頃までは続くと思われ、日経平均は1,700円前後のボックス相場で推移するであろう。このような時期には、どこかに活路を見い出そうとする個人投資家の心理をついて、仕手株が横行する場合が多い。それゆえ、ここしばらくは、個人投資家には、特に慎重な姿勢が望まれる。私の友人の中にも、こうした警戒感・慎重論から一旦ほとんどの資金を引き上げ、来るべき大底を虎視眈々と狙っているものが何人かいる。

亀屋染物店 江波戸等